小川一水『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ』シリーズ (ハヤカワ文庫JA 既刊2巻)
SFマガジン編集部 編『アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー』(ハヤカワ文庫JA)に収録された、同名の書き下ろし短編を長編化したものである。
人類が銀河系に飛び出してから数千年。
とある辺境の星系に暮らす宇宙移民(周回者 サークスを自称)たちは、この星系固有の大気中を泳ぐ巨大魚=昏魚(炭素・ケイ素・ゲルマニウム・リチウムが主成分)を宇宙船で捕獲することで、居住用船団の維持に必要な資源と外貨を得ていた。
この昏魚漁に使われる船は人間の意思によって形を変える粘土で作られており、夫が操縦する船を、妻が漁船をその魚ごとの漁に合った形へと変形させ、更に粘土で網を作ることで漁を成立させていた。
……という設定は面白いし、そんな社会の中で女同士で漁をするテラとダイオードのコンビの活躍もまあ痛快ではあった。面白い小説だった。
ただし作者が早川書房の主催するSFコンテストの審査員の立場で、同コンテストの応募作について「現代では当然のフェミニズム的価値観を、未熟な新人の作品にどのていど求めるかどうかというのは、前回から引き続き悩ましいね。」などと発言したベテラン作家でなければ、だが。
(発言ソース
https://twitter.com/ogawaissui/status/1156888310368706561)